大学に入ったら「経歴」をゼロに

2011.05.16

大学に入ったら、今までの自分、どこに生まれ、どこで育ち、どういう学校を出て、どういう生き方をしてきたのか、という「経歴」をゼロにしてやれるところがあります。これが、大学の楽しみの欠かしえない一つだと思います。高校までは、そんな思いは湧きませんね。誰でも、十八歳までの自分のキャンバスをもっています。しかし、それがどんなに心地いいものであっても(心地悪いならなおのこと)、そういうものをいったんは捨てて、新しいものを描こうとする絶好の場所が、大学です。そういう契機がなければ、大学にいった意義は半減します。第一、面白くありません。私は今、五十五歳です。四十五、六になったら、子育ても終わり、いちおう人生進路に決着がつきます。その頃に、クラス会がひんぱんに開かれるということになります。この時期のクラス会は、懐かしい面もありますが、妙に白けたところがあり、私は余り出ないようにしています。四十五、六になると、昔の友だち同士の感じのままでつきあおうと思える人は、せいぜい二、三人で、もう一度、新しい友だちになってつきあいたい、と思える人も同じ数くらいしかいません。かつて、同じクラスで同質の雰囲気の中にいたと思えた人の大部分が、ほとんど異質な世界の住人になってしまっているのですね。異質というよりは、つきあうにはあまりに大きな溝が横たわっている、という感じがするのです。感じだけではなく、事実でしょうね。
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