英語でコミュニケーションをとるには、まず日本語の知識があることが大切であると、しつこいくらいに話してきました。さて、ここでは、もう1つ重要なものについて述べておこうと思います。それは自信です。いや、勇気と言ったほうが適切かもしれません。同時通訳者の中にも英語表現能力は大変すばらしいのに、現場であかってしまい実力を発揮できず、その道を断念してしまう人さえいます。そうかと思えば、文法はメチャクチャ、発音も決してきれいではない中高年の女性が、海外で元気にコミュニケーションをしている場合もあります。そんな彼女たちの最大にして唯一の武器は勇気です。加えて、どうしても意思疎通したいという意欲です。かつて、イギリスのレストランでこんな風景に遭遇したことがあります。ある日本人男性が食事を終えたあとに、ウエイターに何か話しかけようとしているのですが、かけそびれてモジモジしているのです。支払いをしたいのですが、それを英語で伝えられずにいるようでした。外国のレストランはテーブルで支払いをするのが慣習です。日本のレストランは食事が済むまでにテーブルに勘定書が運ばれてきて、それを持ってレジで支払いを済ませるというスタイルが普通ですが、欧米では持ってきてくれませんし、レジも見あたらないことがあります。ウエイターも「ボーイ」では通用しない年配の男性も多く、何と言えば自分のテーブルに来てくれるのか躊躇してしまいます。さて、日本の男性がこんなに苦労しているのに、中高年の女性の一団はものの数秒で済ませて笑顔をふりまいて「サンキュー、サンキュー」と出ていきました。女性たちは食事が終わったと思ったら、まさしく日本人のカタカナ英語で。「(片手を挙げて)ウエイター。(空のお皿を示しながら)フィニッシュ!お勘定」と言ったのです。最後の「お勘定」なんて日本語そのものなのに、ウエイターは勘定書を持ってきました。もう、見事としか言いようがありません。典型的な「おばさんイングリッシュ」でことが運び、相手に好感を残しているのです。すべてがこのレベルで収まるとは言えませんが、慣れない外国で話すのに、図々しいことがいかに得であるかがわかるいい例だと思います。
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